【比較】標準画角50mm。レンズごとに何が違うのか?
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人が一箇所を凝視した時の視界にもっとも近いとされていることから、標準画角と呼ばれている焦点距離、50mm。
最近いろんな種類のレンズを眺めていて、試してみたい!となるレンズが50mmであるケースが増えてきました。たとえばVoigtlanderのNOKTON 50mm F1 Aspherical。フルサイズ対応で最大絞り値が1のような大口径レンズは、Zマウント以外を見てもそうそうありません。
でももう焦点距離50mmは標準ズームがあるし、単焦点もFマウントだけどAF-S NIKKOR 50mm f/1.8Gがある。5mm違うけれど55mmのMicro-Nikkorも購入してから間もない。
そんな中で50mmを増やしたいかもしれないと思っているのは、完全にレンズ沼というやつかもしれません。
同じ焦点距離なのに何が違うのか
発売年が2011年の50mm単焦点、2019年のズームレンズの50mm、1981年の55mm単焦点のレンズを使い、同じ設定で同じ鉄塔を撮ってみました(水平角度だけ調整しています)。
絞り値:f/5.6
シャッタースピード:1/500秒
ISO感度設定:ISO 100
ホワイトバランスがオートだったので色味は若干揺れがありますが、この記事に掲載するくらいのサイズ感だとあんまり違いがわからないかもしれないですね 👀
解像感の違い
ただ、等倍で見てみると目に見える差が出てきます。
左からAF-S NIKKOR 50mm f/1.8G、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S、AI-S Micro-Nikkor 55mm f/2.8ですが、とくに中央の例はさすがS Line。鉄骨のエッジがもっともシャープに写っているのがわかります。
続いて、f/11まで絞ってみます。
絞り値:f/11
シャッタースピード:1/100秒
ISO感度設定:ISO 100
私の所持している55mmの無限遠は、f/11まで絞ったときにもっとも解像するのですが、ここまで絞ると差は縮まってきます。
一方で、ここまで絞ってみても、やはりもっとも新しくコストも桁違いのNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sが一歩抜けていることがわかります。
なら他のレンズは不要なのかというと、まったくそうではないのがこの沼のおもしろいところです。
透過光量の違い
次はお花を撮ってみます。生垣に咲いていたツツジを同じ設定にして撮影しましたが、興味深いことに2本のレンズで、写りの明るさに明確な差が出ました。
絞り値:f/4
シャッタースピード:1/100秒
ISO感度設定:ISO 200
画像の平均輝度を比較すると、その差はおよそ1段分(ChatGPT調べ)。そんなに変わることはないと言っていたClaudeも、実際に画像データとExifを確認して「これは驚きの結果です。」と言っていました。
なぜこんなことが起こるのかをClaudeに聞いてみると、次のような回答が得られました。
f値はレンズの焦点距離と口径から計算される理論値で、レンズ内部での光の損失は考慮されていません。実際にセンサーに届く光量は、レンズのガラス枚数やコーティングの性能によって変わります。この「実際の透過光量」を表す指標がT値(Transmission値)で、映画用のシネマレンズではこちらが標準的に使われています。
今回の場合、50mm f/1.8GはFマウントレンズをFTZアダプター経由で使用しているため、アダプター内部での反射なども光量低下の一因になっている可能性があります。これらの要素が積み重なった結果、同じf値でも約1段分の明るさの差として現れたのではないかと考えられます。
T値、はじめて聞く言葉です。F値 / √透過率で求まるそうですが、T値を正確に知るためには透過率を知らないといけないみたいですね。
3本目のAI-S Micro-Nikkor 55mm f/2.8も同じFTZ経由で使っているので同様に暗いのかというと、こちらはAF-S NIKKOR 50mm f/1.8Gほどは暗くありません。
若干この写真は撮影距離が寄り目ではありますが、光量に影響はないはず(むしろ暗くなる?)。これについてClaudeは次のように述べています。
50mm f/1.8Gが特に暗く出ている理由は、レンズ自体のコーティング世代やガラス枚数による透過率の差が大きいのかもしれません。AI-S 55mmは枚数が少ないシンプルな光学系なので、古いレンズながら透過ロスが少ない、というのはありえる話です。
鉄塔ではとくに、遠くのものが滲むかどうかという差がありましたが、今回は純粋に写りの明るさの違いが見えてきました。
最短撮影距離の違い
鉄塔では厳しい戦いを強いられていたAI-S Micro-Nikkor 55mm f/2.8ですが、そもそもこのレンズはMicro-Nikkorの名を冠している通り近距離に強いタイプのレンズです。
絞り値・シャッタースピード・ISO感度、すべて変えずに限界まで近づいてみました。
前述のAF-S NIKKOR 50mm f/1.8GとNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sで撮ったツツジもできるだけ近づいて撮影した気がしますが、このレンズは別格で寄ることができます(PK-13なし)。
近距離でも像が歪まず、しっかり描写してくれていますね。
最大絞り値の違い
AI-S Micro-Nikkor 55mm f/2.8
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G
それぞれ名前にある通り、最大絞りは2.8、2.8、1.8となっています。
まずはAI-S Micro-Nikkor 55mm f/2.8です。開放だと遠くがぼやけがちな印象がありますが、近距離撮影ならバッチリ鮮明に捉えてくれます。
続いて、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sです。先ほどと同様、ばっちり明るく写りますね。大三元レンズらしく開放から何を撮ってもしっかり描写してくれます。
同じような焦点距離、被写体との距離、同じ絞り値。時代も造りも違うのに、ボケの感じは似ています。よーくみると輪郭まわりの柔らかさが違うように感じますが、露出が揃う っていたら区別がつかないかもしれません。
後者の方が圧倒的に最新技術が詰まったレンズではありますが、個人的にはどこかAI-S Micro-Nikkor 55mm f/2.8のほうが好みな気がするのもおもしろいです。
最後にAF-S NIKKOR 50mm f/1.8Gを見てみましょう。
先ほどまでよりもボケが溶ける方向に行っている気がします。花びらの浮き上がり方に差を感じるのがさすがは絞り値1.8といったところでしょうか。
がっちりばっちり切り取るNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sとくらべて、しっかり解像しながらも、どこか温かさがあります。この雰囲気はこのレンズ独特のものだと感じていて、結局いまも手放さずに使っています。
Zマウント版のNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sも試してみたい気持ちがありますが、素人ながらまったくコンセプトが違うように思うので、叶うなら両方所持したいところです。
絞り値ごとの描写の違い
最後に、絞りを変えたときの描写の変化を見てみます。
新宿某所のビルを足元から見上げて撮影しています。
AF-S NIKKOR 50mm f/1.8Gの開放f/1.8で適正露出をとると、シャッタースピードは1/640秒になりました。三脚がなかったためシャッタースピードを固定して、絞りを1段絞るごとにISO感度を上げていくことで、露出を揃えたまま撮り比べてみます[1]。
各種絞り値で撮影したビル写真の中央を等倍で切り出し、左からAF-S NIKKOR 50mm f/1.8G、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S、AI-S Micro-Nikkor 55mm f/2.8の順に並べました。存在しない絞り値のケースはNO DATAとしています。
他にもいろいろ違う
今回やってみて、同じ設定でも写りに違いがあることがよくわかる例が作れたと思います。自分でやることでより具体的に違いを認識できた気がしました。
項目 | AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S | AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G | NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S |
|---|---|---|---|
最大絞り | f/2.8 | f/1.8 | f/2.8 |
最小絞り | f/32 | f/16 | f/22 |
レンズ構成 | 5群6枚 | 6群7枚 | 15群17枚 |
質量 | 約290g | 約185g | 約805g |
絞り羽根枚数 | 7枚 | 7枚(円形絞り) | 9枚(円形絞り) |
最短撮影距離 | 0.25m | 0.45m | 0.38m(ズーム全域) |
最大撮影倍率 | 0.51倍 | 0.15倍 | 約0.22倍(70mm時) |
重さや素材、どれだけ寄れるのか、絞れるのか、ボケるのか。絞り羽根の枚数や形で光芒の出方も変わります。レンズのコーティングや構成、収差の解決方法などの違いはとくに描写の違いに直結するはずです。MTF図やスペック表からも違いは読み取れますが、実際に撮ってみてはじめてわかることが多い。
あらためて、「焦点距離が同じ」だからといって「レンズの役割も同じ」とは限らないことがよくわかりましたね。
レンズの数だけ個性がある
というわけで、私の持っている標準画角を写せるレンズを思いつく限りの方法で比べてみました。
レンズについて学んだことをまとめるレポートとしてこの記事を書き始めましたが、最終的になかなかのボリュームになりました。今後もカメラについて学んだことが出てきたらまとめていこうと思います。
最後に、素人なりにも現時点での各レンズへの思いを残して筆を置こうと思います。
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Ⅱ型がでたけどまだまだ現役、我が家のエース。とりあえず持っていく1本である地位は揺るぎません。他のレンズに比べてT値が低い(=透過効率が高い)という傾向も見えて、より一層頼もしく感じます。後悔させない自信を感じるレンズです。
AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G
Fマウントの最初の1本によく選ばれたというAF-S NIKKOR 50mm f/1.8G。通称撒き餌レンズと教わりましたが、その性能はばっちり本気を感じる描写だと思っています。 開放で撮らずとも、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sではなく、こっちで撮りたくなる日がたびたび訪れる不思議な魅力があります。
私が自分で最初に買ったレンズという思い出補正も相まって、今後も手放すことはないでしょう。
AI-S Micro-Nikkor 55mm f/2.8
さすがは40年間も愛され続けたAI-S Micro-Nikkor 55mm f/2.8。近接での正確さに定評があるとの声が多いこのレンズは、確かに近距離でも像が歪まずしっかり描写してくれます。
なにより、はじめてのマクロレンズもといMicro-Nikkorなので、深い感動を与えてくれた1本です。AFではないところもある種いいところで、現在レンズしか知らない私にMFの楽しさに気づかせてくれました。
80年代のレンズが今でも通用しているという事実が、さらにレンズの世界への興味を持たせてくれたし、MFの楽しさからVoigtlanderにも興味がでてきたりして、もっと深くレンズ沼を楽しみたくなりました。
AI-S Micro-Nikkor 55mm f/2.8はレンズという枠組みを超えた、まさにレジェンダリーな銘玉なのだと感じます。
脚注
- [^1]:絞るごとにISOが上がっており、後半はノイズの影響も含まれている。次回チャンスがあれば三脚を立てて、ISO感度ではなくシャッタースピードを変えていく方法でチャレンジしたい。